《MUMEI》

「なっ…」



突然の大声に驚く安本。



「安本さんは僕が喜んであんなプレーやらせたと思ってんすか!?」



「…っ!?」



「ガタイのない状況化で自分の役割を探したあいつが自分から僕に頼んだプレーなんですよ!!」



「えっ…」



安本はコートを見る。


選手たちが驚く中で、


千秋は1人得意気な顔をしていた。



(やりましたよクロさん!!)



「…」



「…チビでガタイのないプレイヤーは必死なんです。


汚い手かもしれないけど、


ファール貰うのも立派な技術。


ケガのリスクを覚悟してもやろうとしたことはあいつの勇気。


そりゃ僕も胸張って勧められるようなもんじゃないすよ。


むしろそんなプレーやらない方がいいと思ってる部分もあります。


でもね?


コーチとしてじゃなく、


同じような立場にあるいち選手として、


あいつのことをほっとけなかったんです。」



























クロは、


ハンドボールに必要なガタイを持たない選手だ。


しかし、


その中でスピードという武器を元に、



チームの中での居場所を求めた。


そして高校2年生の夏、


キーパー泉の引退後、


スピードだけでは通用しないことを痛感する。


その時からクロは細かい技術を徹底的に追求した。


パステクニック。


フェイント。


そしてファールの貰い方もその1つである。


千秋にファールの貰い方を教えたのは、


ほんの2週間ほど前の話であった。

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