《MUMEI》
劇的な再会
.




………一瞬、

時が止まったかと思った。


わたしを取り巻くすべての雑音が消え去り、

突然現れた『彼』の姿に、

くぎづけになってしまったのだ。





『彼』は、さんさんと降り注ぐ春の太陽の光に目を細めながら、ゆっくりとした足取りで、境内の中へ入って来た。

『彼』の白いスニーカーが参道を歩くたび、

ジャリ…と小石が鳴く。


一瞬でひとの心を奪うような、キレイな顔立ち。スッと伸びた背筋。黒いヘンリーネックのTシャツ。インディゴのデニム…。


紛れも無く、今朝出会った『彼』だった。



………ウソッ!!

こんなところで!?



軽いパニックに陥りながら、わたしはベンチを蹴飛ばすような勢いで立ち上がった。


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