《MUMEI》

.

思い付いたが早いか、わたしは早速、ほほ笑みを浮かべようと、口角をつりあげた、

………が、

どうしても頬の筋肉が強張り、引き攣ってしまう。


しかし、


『彼』は別段、わたしのことを気にする様子もなく、フイ…と顔を背けたかと思うと、そのままわたしの目の前を通り過ぎて神社の拝殿へと向かってしまった。



…。

……。

………。

あ、あれ??

ウソッ!!『ほほ笑み』が効かないッ!?

あの雑誌、デマ??



アワアワするわたしをよそに、『彼』は拝殿の正面にある賽銭箱のまえに立ち、

ゆっくりと、古びたお社を見上げた。

そのまま、石になったように動かない。



………どうしたのかな??



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