《MUMEI》
英雄の書:前書き
愛すべき、憎むべき人々へ――

これは美談ではない。泥臭く、血腥い、一人の男の薄汚れた物語である。

なればこそ私は自信を持ってお薦めする。是非とも一度は読んでいただきたい。

美しいだけが人間だろうか。
格好良いだけが人間だろうか。
強いだけが人間だろうか。
優しいだけが人間だろうか。

それは否である。全くの否。

醜くてこそ、格好悪くてこそ、弱くてこそ、非情であってこその人間だ。

これはそんな人間らしい少年の物語。歴史上最も人々に嫌われた英雄譚。

さあ覚悟せよ。彼は、優しくない。

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