《MUMEI》
一章 魔力無し―落ちこぼれ―
色の無い髪が浮き上がる。そしてその髪を持つ少年と共に吹き飛んでいった。

呆気にとられた周囲の者たちは、一瞬後に歓声を上げる。その内容は吹き飛んだ少年への野次であったり、吹き飛ばした少年を称える言葉だったり。様々な言葉が飛び交う中、飛ばされた少年が起き上がった。

色素の抜けた真っ白な髪に、同じく白い瞳。身に纏った濃紺の制服は砂にまみれて汚れている。

彼が制服を叩いて汚れを落としていると、彼を吹き飛ばした張本人が緑色の髪を揺らして近付いて来た。

「僕の風魔法のお味はどう? "落ちこぼれ"クン」

そこそこ端正な顔を厭らしく歪ませる。白髪の少年はそんなもの意に介さずに、淡々と述べた。

「魔力抵抗ゼロの俺にここまでダメージを与えるなんて、すげぇなお前」

野次馬からはプッと吹き出すような笑い声が漏れてくる。緑髪の少年は、今度は羞恥に顔を真っ赤にし、怒りで顔を歪ませた。

しかしそれを無理矢理抑えると、嘲るような表情を作って反論する。

「手加減してあげたに決まってるでしょ? そんな僕の優しさに気付かないなんて、これだから落ちこぼれクンは……」

「ご慈悲痛み入ります」

返って来たのは棒読みの感謝。また馬鹿にされたと怒りの言葉を吐こうとすると、白髪の少年はいつの間にか真横にいた。

「ご慈悲ついでに……」

緑髪の少年の足元を払う。彼は抵抗どころか何の反応も出来ずに尻餅をついた。

「邪魔だから退け」

そう言い残して立ち去る少年を誰もが唖然として見送った。彼の動きを見切れた者は、一人としていなかったのだ。

「あれが、ラス・エグネヴァ……ただの落ちこぼれじゃないのか……?」

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