《MUMEI》

「魔力ねぇし、落ちこぼれ扱いは仕方ねぇと思ってる。だが、何でそれが『努力してない』ってことになんだ?」

静かに語り出すラス。その声には明らかな怒りが込められている。

「してない訳ねぇだろが。寧ろてめぇらなんかよりずっとしてる……!」

静かだった声が少しずつ高ぶってきた。それはまるで、抑え切れない憤怒が徐々に漏れ出してくるようで。

「俺が、魔力がねぇってことだけで好き放題罵られて何とも思ってねぇと、悔しくねぇと、見返してやるって思わなかったと! 本気で思ってたのかよ!?」

高まり過ぎた怒りが、

「ふざけんなッ! 努力したんだ俺はぁ! てめぇらが遊んでる間も休んでる間もずっと!!」

遂に溢れ出した。

激情を宿した絶叫が、揺るぎない憤怒が、痛いくらいの殺意が、空気をビリビリと震わせる。

恐怖に支配され、誰もが動けない。手負いの猛獣に睨まれているようだ。少しでも妙な動きをとれば――

――殺される。

「その努力を知りもしねぇで勝手なことほざいて!! 俺の努力をなかったことにすんじゃねぇッ!!」

逆鱗に触れるとはこのことか。彼の怒りは誰しもに恐怖を与え、そして一つの教訓を与えた。

ラス・エグネヴァを怒らせること無かれ。

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