《MUMEI》

なんでもないように見えるワンプレーだった。


しかし、


そのプレーに千秋は目を奪われた。



(今の…
ああやってファールを貰えれば抜かれることはないんじゃないか…?)



その日、


千秋は終始クロのプレーを目で追った。


ある程度実力がついてきた今だからこそ、


そのプレーの凄さを改めて知った。



























練習終了後、













「あの…クロさん。」



「ん?」



着替えるクロたちの元に千秋が近づく。



「どした?」



「あの…
クロさんはわざとファール貰うプレーをしてるんですか?」



「そ〜だよ。
こいつこすいから。」



笑いながらヤマトが言った。



「失敬な奴め。」



着替えながらクロは返す。



「お…俺にも!!」



「ん?」



「俺にもできますか!?」



「…」



クロたちに一瞬の沈黙が流れた。



「あのね?


わざとファール貰うプレーってのはケガのリスクがあんのさ。


僕はそれくらいしないと」



「俺も!!」



「…っ?」



「俺もそのくらいしないと皆の役に立てないからッ!!」



「…」



再びクロたちに沈黙が流れる。



「ケガが怖くないの?」



「こ…怖いです…けど…」



「…よし。」



「えっ…?」



「合格。
今日から自主練の時間はそっちに注ぎ込むよ。」



「おいクロ…」



「いいんだ。


気持ちわかるし。


ケガ怖いのに教えて欲しいってのが気に入った。」



「はぁ…
俺知らね〜からな…」

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