《MUMEI》

そして今。


クロから教えて貰った技術を、


千秋は初めて実戦の中で使っていた。



























赤高ベンチ。



「俺は…バカだ…」



安本が呟く。



「いや…
心配すんのはわかります。」



落ち着いた様子でクロはそう言った。



「違う…」



「えっ?」



「何か理由が欲しかっただけなんだきっと…。」



「…よくわかんないすけど。」



「…嫉妬してたんだと思う。
コーチって立場で皆に色々教えられるキミに。」



「…」



「俺は何か理由をつけてキミを否定して、


自分の居場所を探そうとした。


…最低の顧問だな。」



「何言ってんすか。」



「えっ…?」



「安本さんは本気で千秋を心配してたんす。


僕にはわかります。


コーチですから。」



「コーチ?」



「ある種安本さんも自分の教え子っすからね。」



「…ありがとう。」



「いえいえ。」

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