《MUMEI》 女の敵めぐみは警察に保護された。ひと晩ゆっくり休ませてから、署内の個室で、美里と瑠璃花が応対した。 「犯人はわかっているんです。今すぐ逮捕してください!」 めぐみは興奮している。美里はなだめるように話した。 「最初から話していただけますか?」 「逃げないうちに早く捕まえてよ!」 「川野さん、落ち着いてください」 「ぶっ叩いてやりたい。ガキのくせに舐めやがって」めぐみは相当イライラしていた。 「犯人の顔を見たんですか?」 「見なくてもわかるわよ。卑怯よ。後ろからハンカチで口塞いで。バスタオル一枚で両手首縛られたら女は逆らえないもん」 美里と瑠璃花は身を乗り出した。由美子の事件と似ている。 「目が覚めたら裸にされてて、まあバスタオルは巻かれてたけど、あいつは服脱がすときに、あたしの体見たんだ」 めぐみは両手で自分の肩を抱いた。 「刑事さん。リフトで上げ下げされて弄ばれたんですよ。悔しいです。早く逮捕して死刑にしてください」 かなり興奮している。美里は冷静に聞いた。 「顔を、見たんですか?」 「マスクかぶってました」 「どんなマスクですか?」 「変なマスクです」 美里が特徴を聞き、瑠璃花がスケッチする。 「あ、アニメに出てくる悪役みたいな。牛みたいに角があって、口から牙が見えて、長髪で」 瑠璃花はマスクの絵を書いてめぐみに見せたが、めぐみは首をかしげた。似ていないのかもしれない。 「犯人を知っていると言いましたが?」 「あのガキに間違いありません。美沙子がよく知ってるから」 「ミサコさん?」 「同僚です。美沙子とあたしと由美子さんが、あのガキをいじめたんです。逆恨みですよ」 (由美子?) 声に出そうだったが美里も瑠璃花も思いとどまった。由美子は告訴しないと言っているのだ。 「川野さん。憎き犯人です。女の敵です。絶対に逮捕したいので、確実に逃げ道を塞ぎたいから慎重になっているのです」 美里の情熱的な目を見て、めぐみは少し落ち着きを取り戻した。 「…わかりました」 「いじめたって、犯人をですか?」 めぐみは急にかしこまった。 「刑事さん。あたしたちがしたことが、もしも法に触れるようなことだと、あたしたちは、逮捕されちゃうんですか?」 美里は由美子の顔が浮かんだ。告訴しない理由はこれなのか? 「約束します。逮捕なんかしません」 めぐみは、美里を信じて、俯きながら語り始めた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |