《MUMEI》 「『落ちこぼれ』だの『死ね』だの『人間じゃない』だの『存在が間違ってる』だの、そんなヒデェ言葉の暴力は黙認するクセに殴ったりすんのはダメだって? つまり、心を殺そうとすんのは良くて体を殺そうとすんのはダメってこったろ?」 再び怒気と殺気に満ちる教室。かなりの熟練者である筈の教師でさえも冷や汗が止まらない。 「どっちも同じだろッ! どっちも結局"死ぬ"ッ!! 俺は、今でこそ暴言くらい流せるが昔は何度も死にかけた!!」 考えてみればすぐ分かる。この少年は幼い頃からあらゆる暴力を浴びせられ続けてきた。成長したり慣れたりすればどうってことはないかもしれない。 初めから成長している訳がない。初めから慣れている訳がない。 死にたくなる程辛かったに、決まっている。 「でも俺は生きてる」 どこまでも己に優しくないこの世界で、彼は生きてきた。逆境に負けずに強く生きてきた。それがどれ程尊いことであるか。 「それを誉められこそすれ、責められ罵られる謂れはない!!」 誰も反応しなかった。というより、どう返してやればいいのか分からなかった。 共感などできる筈がない。味方も無く、己以外の全てに虐げられてきた彼の気持ちなど分かってやりようもない。下手に分かったフリをしようものなら、逆鱗に触れるのがオチだ。 ラスは何の反応もしない教室内の面々に興味を失ったのか、無表情で席に着く。しかしまだ沈黙は続く。 結局、中々教室から出て来ない彼らを不審に思った他の教師が呼びに来るまで、沈黙したままだった。 前へ |次へ |
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