《MUMEI》
逆レイプ
無抵抗の祐也は、六人の女性に囲まれてしまった。めぐみが店員三人に説明する。
「この子が股洗ってって言うから洗ってあげたら、2秒でちょっと待ってだもん。じゃあ言うなよ」
年上ならともかく、自分と同じくらいの若い女子に全裸を見られて、祐也は身じろぎした。
「じゃあ祐也。オイル落としてあげる」
めぐみはしつこく股を洗い始めた。
「ちょっと…」
「やめなよ」美沙子と由美子が笑いながら止める。
祐也が暴れた。華奢でも男。力は強い。すると、何を思ったか三人の店員が、面白がって祐也を押さえつけた。
「ククク」勝ち誇っためぐみは、祐也を責めまくる。
「たんま、たんま!」
「謝るか?」めぐみが迫る。
「ごめんなさい」
「かわいい!」美沙子が無責任に笑う。
「ちょっと待って、ちょっと、ちょっと、あっ……」
「嘘?」
皆初めて慌てたが、笑顔で誤魔化す。
祐也は真っ赤な顔をして目を閉じると、横を向いた。
まずいと思い、美沙子は素早く祐也の下半身を洗ってあげた。
「ほどいて」
「怒ってるならほどけないよ」
「怒ってません」
美沙子は、意に関せず黙々と作業する男のほうへ歩いていった。
「夜月さん」
「え?」
美沙子は耳もとで囁く。
「彼が暴れたら助けてね」
「え?」
夜月はポカンとしている。美沙子は夜月に笑顔を向けると、祐也のもとに戻った。
「あそこにいる男の人、あたしのファンだからね。祐也君、暴れたらボコボコにされちゃうよ」
祐也は焦った。
「暴れませんよ」
美沙子が手首をほどくと、祐也は黙ってマッサージルームを飛び出した。
ずっと無言でいためぐみが、口を開く。
「ヤバかったかな?」
「ヤバいよう」美沙子がやや顔をしかめる。
「わざとじゃないよ。弱いくせに股洗ってなんて言うからよ」
口を尖らせるめぐみ。由美子も真顔で言った。
「あれは男の子にとって恥ずかしいでしょう?」
「耐えられないもんなんですかねえ?」若い女子店員が首をかしげる。
めぐみは、苦情という形で来るかと心配になり、言った。
「美沙子。あとで謝っといて」
「わかった。謝っとく」


めぐみの話を聞き終わると、美里は首を左右に振った。
19歳の少年にそんなことしたら、ひとたまりもないことくらいわかると思うが。
美里は、めぐみを責めたい気持ちをグッと堪えた。そのとき、瑠璃花が言った。
「つまり、逆レイプですね?」
「……」
美里とめぐみは、冷たい無表情で瑠璃花を見る。
「すいません」瑠璃花は小さくなった。

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