《MUMEI》 天使と悪魔〜栄実視点〜 滲んだ視界の先にあるものに向かってポツリと呟く。 「麗羅・・・」 目を閉じてもポタポタと流れ落ちる雫は止まらない。 麗羅、こんなに私のことを大切に思って考えてくれてたんだ・・・。 嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。 こんなに私のことを想ってくれている麗羅を傷付けてしまったことに 私が麗羅に近づこうと思った最初の理由に罪悪感が募る。 そして、それでも優しい言葉をかけてくれる麗羅を思うと胸が締め付けられる。 私、麗羅を利用してたのに・・・ こんな私を慕って大切に思ってる麗羅が可哀想。 先程感じた暖かい気持ちは、どれだけ自分を責めてもおさまらない黒く深い渦――ブラックホールへとのまれていく。 私は、麗羅の隣に居る資格なんてない・・・。 "資格とか・・・・・ そんなものいるの? みんな栄実が大切だから、栄実の力になりたいって思ってるんだ。 資格とかそんなん関係ない!" 自責の念に駆られていると、ふと歩っちに言われた言葉が頭をよぎる。 私だってみんなのこと好きだし大切。 だから笑ってて欲しいって思う。 でも陽奈子を傷付けたまま、他に大切な人を作るのは最低だと思ったし 他の人に心を動かされちゃいけないと思った。 ずっとここにいなきゃいけないと思った、絶対忘れたら駄目だって・・・。 でもどれだけ固く誓ったって、みんなのこと知っていくうちにどんどん好きになっていった。 気付いたら一緒にいるのが当たり前で、自然に笑ってる自分がいた。 何て・・・弱い決意だったのだろう。 繰り返し繰り返し自分を責める。 今、私がするべきことは自分を責めることではないって頭では理解しているのに・・・。 頭の中で天使と悪魔が囁く。 "前に進むために何ができるのか考えよう? 自分を責めたって今の状況は変わらないよ" 天使がそう囁くと間髪いれずに悪魔が強い瞳で睨みつける。 "自分だけ楽になるつもりなんだ? 誓ったくせに・・・もう自分との約束破るんだ?" 考えても考えても答えはでなくて、気付いたら疲れて眠っていた。 麗羅からの手紙を握りしめたまま。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |