《MUMEI》

修羅へ堕ち美し君が鬼となる

共に堕ちましょう。共に滅びましょう。行く先はただひとつ。地獄。

五月、雨がしだいに弱くなりだした。時刻は午前三時。「南 森代」は自分が住んでいる小さな小さな部落「金折村」で、そこに住む己を除く二十四人のうち、二十三人を殺害した。あと一人。

「南 葉子」は森代の双子の姉である。そして二十四人の最後の生き残りでもあった。彼女は身体が弱く、一日の半分以上を布団の中で過ごす生活であった。しかし今この状況でそんなことは関係ない。逃げるしかない。唯一の家族、それも双子の妹である森代が殺しにやってくるかもしれないのだ。彼女は患っている身体を無理矢理引きずりながら、山を二つ越えた先の大きな村まで逃げようとした。

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