《MUMEI》
在り来たり
驚いたけど

変なプライドが高い俺は

平常を装って。


「ん…これから病院」

「…そっか、じゃ。お大事にな」

《誰か》はそれだけ言って
立ち去ろうとした

でも、そいつの体が60度くらい回ったところで

俺から話しかけた


「サンキューな」

「何が?」



…何が、って

「保健室、連れて来てくれて」


「…ああ。いえいえ」


「…あとさ、」


ここはストレートに

「…何くん、だっけ?」


…失礼かな、と思って取り繕う

「わりぃ、まだクラスメ…」

「佐藤」


…こいつは、人の話を遮るのが

得意なようだ


「佐藤秀一」

「佐藤、くん」

「…“佐藤”なんてたくさんいるよ」

「秀一くん」

「呼び捨て希望」

「じゃ、秀一…わりぃな」

「いいや」


秀一はニッと笑った



「無理もないよ。まだ、入学して二カ月だ」


俺に背を向けて歩き出す


「俺もまだ、ちょっとしか覚えてないし。
じゃ、お大事にな〜」


秀一は手をヒラヒラ振った




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