《MUMEI》 推理車に戻ると、三人は話した。 「徳中さんはどう思う?」美里が聞いた。 「どう思うって?」 「やっぱり、逆恨みを恐れて告訴に踏み切れないのかなあ?」 「それもあるだろうけど、レイプされてないなら、大問題にしたくないって気持ちもわかるよ。だって、自分たちも逆レイプしたんだから?」 徳中のセリフを聞いた美里は、素早く後部座席を振り向いた。瑠璃花は笑顔を手で隠す。 美里は何も言わずに徳中に目を戻した。 「でも、めぐみさんは告訴した」 「そりゃあ、性格もあるし、めぐみさんの場合吊されたりしたから、悔しさはあると思う」 「由美子さんはチンピラにレイプされかかったのよ」 「あの」瑠璃花も話に加わった。「あたしの推理も聞いてくれます?」 「もちろんだよ」徳中が優しい眼差しで振り向く。 目を輝かせる徳中を見て、美里は少しムッとした。 「あの、由美子さんのほうは、自演てことは考えられませんかね?」 「ジエン?」美里が聞き返す。 「チンピラ三人の話だと、由美子さんは始めからバスタオル一枚でいた。つまり、だれからも襲われていない」 「ん?」美里は意味がわからず首をかしげた。 「あ、自演か」徳中はわかった。「え、でも、それじゃ彼女は、公園で着替えてたってこと?」 「いえ、違うんです。由美子さんはバスタオル一枚になって、そこをチンピラに襲われてしまった」 美里が口を挟む。 「何のために?」 「え?」瑠璃花の顔が赤い。 「若い女性が公園で自分から裸になるわけないじゃん」 「はあ…」 「あなたのは推理とは言わないよ」 「すいません」瑠璃花は小さくなった。 「本人の人権に関わることよ。警察官は言葉に気をつけないと」 「美里さん」 「うるさい」 「瑠璃花チャンだって意見を言いたいんだから、そんな厳しく言ったらかわいそうだよ」 「ミスター依怙贔屓は黙ってなさい」 「何で知ってんの?」 徳中は一人で笑っている。瑠璃花は激しく落ち込んでいる様子だ。美里は胸が痛み、瑠璃花の肩を優しく触った。 「もういいよ、瑠璃花」 「……」 瑠璃花が落ち込んだ理由は、美里には知る由もない。 前へ |次へ |
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