《MUMEI》
対面2
    〜海視点〜


麗羅チャンと別れた後、走って駅に向かう。


間に合うかな?


昨日のうちに電車の時間を調べておいた俺は、時計で時間を確認する。


昨日より1本遅い電車に乗れるか乗れないか微妙な時間だ。


しかしその電車を乗り過ごしてしまうと、昨日より着くのが1時間も遅くなってしまう。


そしたら先生居るか危ういからな・・・。


昨日より1本遅い電車に乗るために全速力で駅に向かう。




俺が駅に着く一瞬前に電車は出てしまい、俺は悔しい気持ちで電車を見送った。


「はぁ・・・走って損した」


駅のホームに備え付けてある椅子にドカッと腰を下ろし、溜め息を1つつく。


しかし、走ってきたせいで息切れしているのであまり溜め息らしくない。


暑いなぁ・・・


ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを開ける。


次の電車は30分後か・・・暇だな。


駅には時間を潰せるものなど何もなく、椅子に座ったままぼーっとして時間を過ごす。


酷くゆっくりと流れる時間に退屈し、あくびが零れる。




何度かあくびをしているうちに、やっと電車がやって来た。


待ってましたと言わんばかりに電車に乗り込み、蓮南小学校へと向かう。




先生帰ってたらどうしようかな・・・。


電車が蓮南小学校の最寄り駅に着いた瞬間、不安に襲われる。


学校へ向かう足取りも速くなり、あっという間に学校へ着いた。


職員室の前まで歩いていき、中を覗くと丁度升坂先生は帰ろうとしていたところらしく、鞄を持ち残っている他の先生に頭を下げていた。


ギリギリセーフ!


と胸を撫で下ろし、升坂先生が出て来るのを待つ。


職員室の隣に職員用の玄関があるので、すぐに升坂先生はやって来た。



「升坂先生!」


俺が升坂先生を呼び止めると、先生は振り返る。


「青浜か」


「約束通り教えて貰えるまで毎日来ますよ」


俺は、挑戦的な笑みを浮かべ先生をまっすぐ見る。


もう暗いので、相手に伝わっているかは分からないが・・・。


「感心するな。


来るの遅いから、口だけでもう諦めたかと思ったよ」



カチン――。


表情が見えなくても、十分口調や雰囲気で伝わってくる。


諦めろ、教える気はないと

続くわけがないと思っているのが。


「今日はもう遅い。


俺はもう帰るから、青浜も帰れ」


有無を言わせない口調で言うと、俺の返事も聞かず先生は自分の車へと向かって行く。


まぁ、今日は遅くに着た俺が悪いし・・・。



「また明日も来ます!失礼します」


俺は先生の背中に一礼し、駅へ向かう。

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