《MUMEI》
美少年
行動は電光石火。美里たちは、美沙子のアパートへ行って祐也の家を聞き、祐也の家へ直行した。
美沙子からは祐也の写真をもらうことができた。お祭りのときのスナップ写真だ。
今の時代、近所だから親しいとは限らない。美沙子と祐也は結構親しいようだ。
美里の中では、今回の卑劣な犯人と祐也がどうしても結びつかない。それとも、だれかに復讐を頼んだのか?
祐也の家の前に到着。美里は、徳中に言った。
「徳中さん、彼は未成年だから慎重にね」
「わかってますって」
「美少女には甘いけど少年には厳しいっていうのはなしよ」
「美里さん、今のどうかなあ。オレは公平だよ」
「どうだか」
徳中も笑いながら返す。
「美里さんこそ、いきなりハイキックはダメだよ」
「はあ?」冗談が通じない。「あたしがそんなことするわけないでしょ。何かキャラ勘違いしてない?」
「まあまあまあ」瑠璃花が後ろから止めた。「犬も食いませんよ」
「はあ?」美里が殺意の目。
「嘘です先輩。それより三人ゾロゾロも目立つから、二人で行ってきてください。あたし車見てますから」
「…わかった」美里の顔が怖い。
「じゃあ瑠璃花チャン。悪い奴らにさらわれないようにね」
「アハハ」
徳中と瑠璃花が笑顔で見つめ合う。美里はさらにムッとした。
こじんまりとした一軒家だ。美里と徳中はドアの前に立つ。
「いるかな?」
チャイムを鳴らす。
「はい?」
男の声。
「生活安全課の徳中照実です。中荻祐也さんですか?」
「はい」
ドアチェーンを外す音。
「やった」徳中は笑顔を見せる。
ドアが開いた。Tシャツに短パン姿の祐也。美里は感心した。本当に美少年だ。
男には見えるけど、体もスマートで、綺麗なかわいい顔をしている。ますます犯人像と重ならない。
「中荻祐也さんですか?」美里が聞いた。
「はい」
二人はゆっくり玄関に入り、ドアを閉めた。
「先ほどは生活安全課なんて言ってすいません」
徳中が警察手帳を見せた。美里も見せる。
「警察?」祐也がいきなり蒼白になる。
「大きい声で警察ですなんて言って、近所の人に聞かれても良くないと思いまして」
祐也が震えている。美里はすかさず聞いた。
「ちょっと聞きたいことがあるんですけど、健康ランドでオイルマッサージを受けましたね?」
その話が出ると、祐也が取り乱した。
「僕は悪くない。あいつらが悪いんじゃないか!」
まさか犯人。美里も徳中も身構えた。

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