《MUMEI》 空虚こういう時って、どうすればいいのかな。 今宵はベッドに横たわり、心なしか遠く感じる天上を見上げた。 体が鉛のように重く感じられることが、スプリングにまで伝わって深く沈みこんでしまっているからかもしれない。 天上や壁の板目の模様も、机も、本棚も写真立てもぬいぐるみも。 目に入ってくるものは、全部いつものように見えるのに。 ゆっくりと両手の掌を、自分に向って翳してみる。 自分の体だって、いつものように見えるのに。 他人から見ても分かるような、危険なモノを抱えているだなんて。 そんなこと、 「考えられないよ・・・」 悲しい、辛い、苦しい、痛い、寂しい。 どんな負の感情にも当てはまらないような、似て非なる感情を初めてもった気がした。 心がまるで空っぽになるように、だんだんと自分の中の何かが零れ落ちていくような。 だから代わりに涙が出てこないのかな・・・。 掌をそっと顔の輪郭をなぞる様に滑らせても、乾いたままだった。 感触だけで分かる程に顔の筋肉が全く動いておらず、きっと表情も乾いているのだろう。 小説や映画のフィクションでは、こんな時には決まって涙を流していたはずだ。 顔をくしゃくしゃに崩して、狂ったように泣き叫んではいなかったか。 でもそれは、脳が自分自身の状態を受け入れたから出来ること。 心臓が、自分という存在が分かっているから出来ること。 今の私は、その【2つの心】と呼ばれるどちらからも切り離されているのだ。 「じゃあ、私は・・・」 フィクションの主人公のようにもなれず、現実を見据えることも出来ない自分はどこにいるのだろう。 自分を確かめるように両手で顔を覆うと、静かに目を閉じた。 前へ |次へ |
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