《MUMEI》 振り出し「テメー!」 何か騒がしい。瑠璃花は車の中から外の様子を見ていた。笑いながら逃げる徳中を、美里が怒りの形相で追いかけている。 「待てテメー!」 「自分が未成年だから慎重にって言ったんだろ?」 美里は徳中を捕まえると、頭めがけてパンパンパンと掌で連打。瑠璃花は驚いて車から出た。 「何やってるんですか先輩!」 「頭はプライドの象徴だぞ!」と美里は怒りながら徳中の頭をパンパン叩いた。 「痛い、助けて」 「やめてください先輩、やめて」 瑠璃花が美里の腕を引っ張って徳中から離した。 「アリバイ聞くのはセオリーだろうがよう!」美里の口調が乱暴になっている。 「あれが演技に見える?」徳中は頭を両手で押さえながら言った。「犯人じゃないことくらいわかるでしょう」 三人は車に乗り込んだ。 「犯人じゃないんですか?」瑠璃花が聞く。 「おそらく」 「断定はしちゃダメよ」 美里はため息をつくと、呟いた。 「となると、オイルマッサージ騒動の現場を知っていた人間?」 「客だったら探しようがないな」 「ふう。振り出しか」美里は首を振った。 「美沙子さんに話を聞いてみますか?」瑠璃花が言った。 「賛成。瑠璃花チャン、ナイス意見」 「ありがとうございます」瑠璃花はニンマリする。 美里も渋い顔でシートベルトをした。 「そうね。まだめぐみさんの話しか聞いてないわけだから」 車は再び美沙子のアパートへ向かった。 前へ |次へ |
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