《MUMEI》
裸にされた天使
ミサトは目を覚ました。自分の姿を見て愕然とした。
「しまった!」
台の上に大の字の格好で両手両足を拘束されている。服は脱がされていないが完全に無抵抗だ。
「ほどきなさい!」ミサトはドエスアクマンを睨みつけた。
勝ち誇った顔のドエスアクマンは、鋭い牙を見せてほくそ笑む。
「おまえのことは今まで散々取り逃がしたし、多くの仲間も殺された。ミサト。きょうこそ逃がさんぞ」
「黙りなさい。今すぐほどくなら、貴様の命だけは助けてやる」
「ふふふ。気の強い女は好きだ。まずはその美しい裸体を見せてもらおうか?」
ミサトは身じろぎした。敵に裸を晒すのは悔しい。
「にひひひひひ!」兵士たちが数人がかりで純白の衣装を引き裂いた。
「くううう…」
あっという間に裸にされてしまった。ミサトは赤面しながら横を向く。
「ちょっと!」刑事美里がたまらず口を挟む。
「捜査資料、捜査資料」
いい場面なので徳中が必死になだめる。いちいち頷く瑠璃花が気に入らない。
一糸纏わぬ姿のミサトを見て、兵士たちは息を呑んだ。
美しい裸。犯しがたい。
ドエスアクマンが顔を近づけて言った。
「ミサト。俺様のしもべになるなら、悪魔にするのだけは勘弁してやるぞ」
ぺっ!
唾を顔面に吐いた。
「うっ…」
「汚い顔を近づけるな!」
瑠璃花が笑顔で胸に両手を当てた。
「ヤバいよう、唾は」
嬉しそうな瑠璃花。美里は後輩の知られざる一面を見た。
ドエスアクマンは唾を拭うと、兵士たちに言った。
「仕方あるまい。始めよ!」
「待ってました!」
兵士たちは皆バトンを手に持って、無抵抗のミサトを取り囲んだ。
「何をする!」
「これが何だかわかるかお姉さん」
「これは電流バトンだ」
「ククク」
電流と聞いて内心怯んだミサトだったが、強気の表情で唇を噛んだ。
バトンが胸。おなか。腰。脇。脚にそれぞれ当てられる。ドエスアクマンが上からミサトを見下ろした。
「この電流バトンは天使泣かせという異名を持っている」
「天使泣かせ?」
「おまえの仲間も皆この電流バトンに攻められて、あえなく屈服してしまったんだ」
「あたしは屈服なんかしないわ」
「ミサト。バトンを当てられている場所をよく見ろ。女の弱点だけは武士の情けで外してやる。俺様は慈悲深いからな」
「寝言は死んでから言いなさい!」
あくまでも強気のミサトに歓喜の笑顔を向けるドエスアクマンは、兵士たちに合図を送った。
微弱な電流が流れる。ミサトは歯を食いしばった。
(負けてたまるか!)
しかし、30秒もしないうちに。
「あ、ちょっと…」
「どうしたミサト?」
「やめろ、卑怯だぞ!」ミサトは赤い顔をして怒鳴った。
「おまえの困り果てる姿を見てみたかったのだ。ハッハッハッ!」
「やめろ、やめろ!」ミサトは激しく暴れた。
刑事美里も暴れる。
「ちょっと、これ行き過ぎだよ!」
「こんなのまだ序二段だよ」
「現行犯で逮捕する」
美里が手錠を出して徳中の手首を掴む。
「ちょっとたんま、何の容疑?」
「先輩、落ち着いてください」
「おまえは公務執行妨害だあ!」
二つ目の手錠で瑠璃花を逮捕しようとする。
「課長にチクりますよ、手錠三つ持ってるって」
美里は黙ると、イスにすわった。三人は続きを見た。

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