《MUMEI》
出会い
いつもの帰り道。
大きな公園の横を通りかかった。
 子供たちが、キャッキャッと甲高い歓声をあげながら遊具で遊んでいる。
そのすぐ近くで、母親たちは噂話に興じている。

いつも通りの平和な風景。

 そんな見慣れた風景に違和感が一つ。
それは、ベンチに座った一人の少女。
「……あの子」
 派手な服装、派手な化粧をしたその少女は、さっき、タイキの横を走り去って行った少女に違いなかった。

 彼女は大きなバッグからパンやお菓子、ジュースなどを取り出しては口に運んでいる。

 その様子をじっと眺めていると、彼女がこちらに顔を向けた。
「あんたさ、何見てるわけ?」
「……え、僕?」
「あんた以外誰がいるんだっての」
彼女は掠れた声でそう言った。
「なんか用?」
「いや、あの、さっきスーパーから――」
そこまで言ったタイキを彼女は鋭く睨んできた。
「なんなの?わたしが万引きしたとでも言いたいわけ?」
まだ何も言っていないのに、彼女は喧嘩でも売るようにタイキを睨む。

 近くにいた子供たちが不思議そうに彼女とタイキを見ている。
彼女の声が大きいので、気になるのだろう。
タイキは彼女の近くまで移動した。

痴話喧嘩とでも思われているのだろうか。
母親たちの視線が痛い。

「なによ。やる気?」
まったく立とうともせず、彼女は言う。
「あのさ、僕、まだ何も言ってないんだけど」
ようやくそれだけ言うと、彼女は「はあ?」と眉を寄せた。

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