《MUMEI》

.

呆然と立ち尽くすわたしに、廉は、置いて行くぞ、とつれなく言った。

わたしはカチンときて、いっそ置いて行けッ!!と怒鳴り返した。


「わたしのことは、もうほっといてって言ってるじゃん!アンタが無理やり連れて行こうとしてるだけでしょ!!」


わたしの怒鳴り声をよそに、廉はスタスタとわたしを置いて進んでいく。

怒鳴り足りないわたしは、ヨロヨロと彼を追いかけながら、また怒鳴る。


「アンタなんか、勝手にどこか行っちゃえッ!!ひとりでどこへでも行けッ!!」


廉は歩みを止めず、歩いて行ってしまう。履き慣れない靴に悪戦苦闘するわたしを置いて。

どんどんふたりの距離が離れて行き、廉の背中が少し小さくなった頃、


「ちょっと待て!!待ちなさいよッ!!バカ!!」


たまらずわたしは叫んだ。

そこでようやく廉が振り返り、どっちだよ…と、呆れたような顔をする。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫