《MUMEI》 . 呆然と立ち尽くすわたしに、廉は、置いて行くぞ、とつれなく言った。 わたしはカチンときて、いっそ置いて行けッ!!と怒鳴り返した。 「わたしのことは、もうほっといてって言ってるじゃん!アンタが無理やり連れて行こうとしてるだけでしょ!!」 わたしの怒鳴り声をよそに、廉はスタスタとわたしを置いて進んでいく。 怒鳴り足りないわたしは、ヨロヨロと彼を追いかけながら、また怒鳴る。 「アンタなんか、勝手にどこか行っちゃえッ!!ひとりでどこへでも行けッ!!」 廉は歩みを止めず、歩いて行ってしまう。履き慣れない靴に悪戦苦闘するわたしを置いて。 どんどんふたりの距離が離れて行き、廉の背中が少し小さくなった頃、 「ちょっと待て!!待ちなさいよッ!!バカ!!」 たまらずわたしは叫んだ。 そこでようやく廉が振り返り、どっちだよ…と、呆れたような顔をする。 . 前へ |次へ |
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