《MUMEI》
ヒロイン陥落
ミサトの目。焦点が合っていない。このままでは落ちてしまう。ドエスアクマンは兵士に言った。
「一旦攻撃をやめい!」
「はっ!」
激しい攻めを許されたミサトは、汗びっしょりでうなだれた。
猿轡が外される。
「はあ、はあ、はあ…」
「色っぽい姿だ。ミサト。ここで哀願しなければ、次はないことくらいわかるな?」
「…やめてください」
ざわめきが起きた。ついにあの強気の天使が屈服してしまった。
「許してほしいか?」
ミサトは屈辱を噛み締めながら、両目をきつく閉じ、横を向いた。
「許してください」
「かわいいところあるではないか」
瑠璃花は笑顔で呟いた。
「悔しい!」
背後に殺気を感じたので、両手で頭を庇いながら後ろを向く。
「何?」刑事美里の顔が怖い。
天使ミサトは目を開けると、うつろな瞳でドエスアクマンを見た。
「もういいでしょう。これ以上辱める必要があるの?」
「何だその態度は?」
ミサトは焦った。
「あっ、違うわ」
「偽りの降参と判断する。攻撃再開!」
「違うの待って!」
「そう来なくっちゃあ!」兵士たちは歓喜の笑顔だ。
「あああん!」
また全身を電流バトンで攻められてしまった。
「やめて、やめて!」
「やめてほしければ謝れ」
「ごめんなさい!」
「かわいいな。では誓ってもらおう。ドエスアクマン様のしもべになりますと」
ミサトは怯んだ。そこまで辱めて何が楽しいのか。しかし言うしかなかった。もう30秒と耐えられない。
「……ドエスアクマン様の、しもべに、なります」
「完敗だな。負けを認めるか?」
「認めます」
「ならば、あたしの負けと言え」
ミサトは目を丸くして慌てふためいた。
「あ、もうダメ、言うから止めて、言うから止めて!」
この慌て方は昇天寸前と見た。
「耐えられないか?」
「はい」震えながら答える。
「それはおまえの問題であって、俺様には関係ないことだ」
「そんな…」ミサトは息を止めて言う。「あたしの負け」
「次はミサトの負けと、女の子らしく、かわいく、色っぽく言え」
(悔しい!)
でも従うしかない。
「ミサトの負け」
「全然かわいくない。もう一度やり直し」
ミサトは汗まみれで耐えながら言った。
「ミサトの負け」
「色っぽさに欠ける。やり直し」
「ミサトの負け!」叫んだ。
「よし、いいだろう」
攻撃はストップした。
「はあ、はあ、はあ……」
打ちのめされた美しき裸の天使は、紅潮した顔を横に向けて、瞼を閉じた。
ドエスアクマンが顔を覗き込む。
「参ったか?」
「参りました」
「悔しいか?」
「悔しい!」
「正直でよろしい。でも安心しろ。おまえは特別に王女のような暮らしをさせてあげる」
ミサトは唇を結んだ。
(今は我慢だ。逆らわないほうがいい)

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