《MUMEI》

「……っ、あゆ……ま」

腹部に浅い刺し傷が出来た。
小さなカッターを持っていたのだ。


「鳥さん……ぼく、本当の鳥を殺したことあるよ……寂しいから飼うんだ……猫や犬も……でもぼくもお腹が……空くんだ。
一緒に死んじゃうと可哀相だし、逃がしたいんだけど一人は悲しいから、足を刺すんだ。
そうすると逃げられない。
そのうち大人しくなる、苦しそうな鳴き声になると、首の辺りを切ってあげる。」

誰があゆまを責められるか、俺が刺されたのは自業自得だ。
なんて、悲しい目をした子だ。


「逃げろ……」

足音がする、俺はどうにでもなればいい。
扉を開くと複数の足音と車のエンジンが聞こえた。

「……はは、見付けたぞ。」

間に合わず、あゆまを箱に押し入れる。
別の組員に見付からなければ良いのだが……。

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