《MUMEI》

「自覚してるよ、ただ、画面を開けて間違ってiモードに指ぶつけたんだ。」

弁解しても無駄なようだ。


「もうやだ……返して……」

泣かしてしまった……。


「授業中、カンニングのために開けたんじゃないんだよな。じゃあなんで開けたんだ?」


「誰の持ち物だったか……確認したかった……」

泣きながら律斗が言う。


「篠さんのだったのか?」

ゆっくり律斗が頷く。

要約すると、律斗の登校用鞄にしたものは篠さんが生前使用していたもので、その中に篠さんの私物らしい携帯が入っていたのだ。


存在に気付いたのがテスト直前で、咄嗟にポケットに忍ばせ、誰のものか確認をしていたところを見られたという。


「篠さんの形見じゃん……俺なんかが触って悪かったな。」

律斗にはまだ学校は早かったのかもしれない。
篠さんの存在が律斗には大きすぎて、まだ代わりの埋めるものが見付からないようだ。

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