《MUMEI》
ミステリアスなカレ
.

不思議に思って、黙って観察していると、

なにを思ったか、『彼』は賽銭箱に張り付くように覗き込み、隙間から指を突っ込みはじめた。

予想もしない展開に、わたしはたまげてしまう。



………えっ!?

まさか、賽銭ドロボー!?

わたしがいるのに、こんな堂々とッ!!

信じられない!?



ア然としてしまった。

『彼』はしばらく悪戦苦闘していたが、やがて諦めたのか賽銭箱から離れて、今度はデニムのポケットから小銭入れを取り出した。

そして、おもむろに小銭入れの口を大きく開くと、

賽銭箱の口の上で、それを逆さにして、

すべての小銭を、ジャラジャラとぶちまけてしまったのだ。


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