《MUMEI》 . 『彼』はわたしを見つめ返して、 しばらく押し黙ったあと、 「……なんで?」 と、尋ねてきた。 わたしが、え…?と小さく声をあげると、『彼』はつづけた。 「なんで、『25円』なの?」 伸びやかな声だった。 わたしは一瞬、ぽかんとしながらも、なんでって…と言葉を探しはじめる。 「そ、それは、『二重にご縁がありますように』って願いを込めて…」 ボソボソと頼りなく答えると、 『彼』は、…は?と、眉間にシワを寄せ、 「『にじゅう に ごえん』??なにそれ??」 本気でイミがわからない…といったふうに、首を傾げられてしまう。 . 前へ |次へ |
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