《MUMEI》 ある日「さぁ、着いたぞ」 「まぁ・・・相変わらず元気いっぱいね」 小さな赤ん坊を抱き締めるように抱えている女性は、自分の視界いっぱいに広がるヒマワリに表情を輝かせた。 背丈は違えど、みな太陽に首を伸ばして力強く咲き誇っている。 そんな花たちは太陽に負けない程輝いていて、目を引きつけて離さない。 男性はそんな女性と、その腕の中で静かに眠っている小さな愛娘に優しく微笑む。 そして自分の腕の中にいる、もう一人の愛娘を抱き直した。 「ほら朔夜、見えるかー?」 赤ん坊よりも二回り成長している娘は、黄色に輝く光に手を伸ばして声をあげて笑っている。 きゃあきゃあと姉の楽しそうな声に引き寄せられたのか、小さな妹が身じろぎをした。 女性が目線を下ろすと、眩しい光に慣れずに目をきつく閉じたまま小さく声をあげている。 「あら、目を覚ましたのね」 ぐずる娘を落ち着かせるように、小さく笑い声をこぼして背中を優しく叩く。 それに気がついた男性は、一層笑みを深めて小さな娘を導くように声をかけた。 「見てみろーきれいだぞ、今宵!」 「大丈夫だから、目を開けてみて」 父と母の優しい声に落ち着いたのか、赤ん坊はゆっくりと目を開ける。 そして小さな小さなその目の視界が光に包まれたヒマワリでいっぱいになった時、ぐずっていたのが嘘のように表情を緩めた。 姉と同じようにご機嫌に声をあげ、黄色い花たちに手を伸ばしている。 「ふふっ小さなお嬢様たちはご満悦みたいね」 「ん、小さなお嬢様たちだけか?」 「もちろん私も満足させて頂きましたよ、十二分に」 「それはよかった」 夫婦は顔を見合わせて笑い合うと、再び花たちに目を向ける。 数え切れない程のヒマワリたちに負けないくらいの輝きが、この家族の笑顔から溢れていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |