《MUMEI》
バカ
   〜栄実視点〜


深い眠りから覚めた時のように、まぶたが重い。


泣きながら寝ちゃったもんなっと、右手で腫れたまぶたに触れる。


視線を下に向けたまま、しばらくぼーっとしていると、左手に何か持っていることに気付く。


あっ――


麗羅から貰った手紙持ったまま寝てたんだ。


麗羅から貰った手紙は、だいぶくたびれてしまっている。


涙と握りしめて寝てしまったせいで。


幸い文字はシャーペンで書かれていたので滲んでいない。


丁寧に折りたたみ封筒に入れようとすると


カサッ――


ん?


中にまだ何か入っているようで、紙と紙が擦れる音がし便せんは上手く封筒におさまらなかった。


1度便せんを取り出し、中にあるものを取り出す。


出てきたのは、同じ便せんだった。


何だろう―?


便せんを広げ読む。


書き出しは、昨日の手紙と同じで"栄実へ"っと書かれている。


"栄実へ

栄実が甘いもの好きって海に聞いたから


作ってみた。


・・・初めてだからちょっと失敗しちゃって


あんまり美味しくないかもしれないけど


食べてくれると嬉しいな。


栄実が少しでも笑顔になってくれたら嬉しい。"


最後に、お菓子は電子レンジで温めて食べてねっと書かれていた。



麗羅のバカ――


何でそんなに人のことばっかりなのよ。


溢れ出しそうになった涙を上を向いて堪える。


私のことをこんなに大切に思ってくれる麗羅を、これ以上傷つけちゃいけないって素直に思える。


鼻をすすり、ベットから降り1階へ向かう。


昨日、麗羅から貰った紙袋を持って。


ラッピングしてある袋を1つ取り出し、中身を取り出す。


手紙に書いてあったように、電子レンジで温める。


温め終わったチョコレートケーキの乗った皿をレンジから出し、テーブルへ向かう。


椅子に腰掛け、フォークでケーキを1口サイズに切ろうとケーキにフォークを入れると


トロリ――


中からチョコレートソースが流れ出す。


フォンダンショコラ?


難しいのに・・・


初心者が作るお菓子じゃないよ?



バカ、本当にバカ。


胸が張り裂けそう・・・


椅子の上で膝を抱えて、顔をうずめる。


ポタリ、ポタリと膝に冷たいものが落ちていく。

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