《MUMEI》 下着姿玄関に足を向けた形で仰向けに寝かされ、両手両足を拘束されている美沙子。 立とうとしても立てない。マスクマンがおなかを触りながら不気味に迫る。 「下着姿見られるくらいじゃ、赤っ恥でもないだろう?」 「あなた、女のこと何もわかってない?」 「君らも男のこと何もわかってないから、純情な少年を逆レイプしちゃったんだろ?」 「あなたには関係ないでしょ!」美沙子が怒鳴った。 バイクの音が聞こえる。アパートの前で止まった。 「嘘でしょ?」 身じろぎする美沙子。マスクマンはブラを掴んだ。 「いやあ!」 激しく体を捻ると、今度は両手でショーツを掴む。一気に下げる気だ。 美沙子は顔が歪んだ。 「それだけはやめて、一生のお願いですから」 マスクマンはじっと美沙子を見つめると、両手を放した。 「わかった。じゃあ、全裸だけは許してあげよう」 そう言うと男は、ベランダのほうへ歩いた。 アパートの廊下を走る靴音がする。 「ヤダ、絶対ヤダ…」 美沙子はもがく。顔が真っ赤だ。 ドアの前で足音が止まった。 ピンポーン。 「やん!」 チャイムの音が下半身を直撃する。 ピンポーン。 「ヤダ、開けないで」 しかし、無情にもドアが開けられてしまった。 「やあ!」 美沙子は横になって、下着姿を真正面から直視されないようにした。 「美沙子さん!」 美里だ。 「刑事さん!」 第一発見者が女性というのが唯一の救い。 部屋の中を覗いた瑠璃花は、ドアを閉めて廊下に出ると、ピザ宅配の店員と男の刑事を止めた。 「ちょっと待ってください」 美里は急いで両手両足をほどく。自由の身になった美沙子は美里に抱きついた。 「ダメかと思った」 「犯人は?」 「ベランダから逃げました」 美里はゆっくり美沙子を離すと、ベランダに走った。鍵が開いている。 「しまったあ!」 バイク便が犯人と思って、二人とも車から出て来てしまった。 悔やんでも仕方ない。美沙子のもとへ戻った。 「大丈夫ですか?」 「酷いことをされました」 美里の顔が凍りつく。その表情を見た美沙子は、急いで言った。 「あ、変なことはされてません」 「本当ですか?」 「はい」 良くないけど、良かった。最悪の事態は避けられた。 それとも犯人は、ドエスアクマン同様、始めからトドメを刺す気はないのだろうか……。 前へ |次へ |
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