《MUMEI》

トリッククロス。


それはクロが考えた新しい戦術。


とはいえ、


何も特殊なことを行っているわけではない。


上と呼ばれるポジションの3人(椎名・ユキヒロ・峰田)。


彼ら3人が作り出す攻撃展開。


それがトリッククロスの正体である。


現代ハンドボールでは、


センター・左45・右45、


この3つのポジションにはオールラウンダーが求められる。


1つのポジションだけでなく、


どこのポジションに行っても得点を決める能力が求められるのだ。


トリッククロスはその攻撃展開の指示を椎名に任せ、


それを実行するという物。


きっかけはクロスから。


単純にクロスからのロングシュート。


最初のこれは布石。


両45(ユキヒロ・峰田)のシュートに全幅の信頼を置いていての布石である。


シュート力のある両45を中心に攻め、


後はおもしろいように得点が決まった。


椎名のロングは2人に比べ威力が乏しいが、


秀皇大学麻倉をのロングを真似て作ったシュートはかなり完成度が上がっていた。


まだ低めへの成功率は低いものの、


高めならば流しも引っ張りもコントロールが良く、


両45のシュートと合わせることで低めに打てないことを隠すと共に、


高めの威力を倍増させた。


3人のロングシュートの種類が異なる物であることも強みとなっている。


基本はロング。


あわよくば突破。


3人のシュート力を信頼したことから作られたフォーメーション。


それがトリッククロス。


そしてこのプレーには、


最後の大仕掛けが待っている。

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