《MUMEI》 あまりの異様な光景に、息さえできない。 ―ところが。 彼等は気付かなかったが、わたしは気付いてしまった。 彼等の背後の闇から、1人の黒づくめの青年が出てきた。 青年はフードで顔を隠していたが、その口元は楽しそうに笑っていた。 青年は音も無く彼等の背後に立った。 すると―彼の影が動いた。 影は細長く幾重にも分かれて、彼等の体を次々と刺していった。 「っ!?」 声も無かった。 彼等は空気だけを吐き出し、すぐに絶命した。 血が、流れる。 彼等の体や、地面、そして池にも。 「…う〜ん。コレでもまだ、足りないなぁ。姉さん側には高い能力者が多いから、もっと力を付けないとな」 そう言って青年は、わたしを、見て、笑った。 「ああっ…!」 尻餅をついてしまった。 けれど動けない! がちがちっと歯が鳴る。 にっ逃げなきゃっ、でも体が動かない! 彼の赤い両眼が、わたしを動けなくさせている。 彼はニッコリ微笑んだ。 それと同時に、辺りの木々が揺れ動いた。 …いや、木々だけじゃない。 影…闇が動いたんだ。 闇は次々と蠢き、そして、 医者、 看護婦、 患者、 達の体を刺し殺して、池へ放り込んでいく。 前へ |次へ |
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