《MUMEI》 選んではならない最期「思い出した? 自分が何ものか」 「ああ、思い出したよ。わたしは…その池に捨てられた、人間だったモノだ」 「大当たり」 彼は笑って、フードを外した。 血のように赤き眼。美しい顔立ちをした青年だ。 「じゃ、ボクが今何を考えているか、分かる?」 彼は楽しそうだ。 わたしが何を言うのか、すでに気付いているんだろう。 「わたし…いや、全てを食らいたいと考えている」 「また大当たりぃ〜♪ て、ことで。良いかな?」 尋ねるも、その眼は否定を許してはいない。 「…ああ、構わない」 どうせ、この体は長く持たない。 わたしは深く息を吐くと、池の前に立った。 「察しが良くて助かるよ。いやね、この間山の中の村に行ったんだ。そこの湖、骨がいっぱい捨てられてたんだよね。そこの村じゃない人間の骨だから、埋葬されず、あの湖に捨てられててさ」 彼は楽しそうに語る。 「だから怪しい病院とか調べたら、ああいう湖、あるんじゃないかなと思ってさ。まさにここがビンゴだったんだ」 「…そう」 「じゃ、よろしく頼むよ♪」 わたしは目を閉じ、そのまま池の中へ身を投げた。 水の冷たさが、体を満たす。 そして眼を開け、わたしは水を自分の中へ取り込み始めた。 …こんなことができるのだから、わたしはもう人ではない。 いや…『わたし』はすでに、死んでいたんだったな。 前へ |次へ |
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