《MUMEI》

「泣いてなんかっ…!」

ただ情けなくなっただけだ。

期待されていない、応えられもしない自分に。

顔を見られないように俯いて、目を閉じた。

涙が溢れてきたのを感じた。

だけどそれと同時に、唇にあたたかな感触が…。

って、えっ!

思わず目を開けると、すぐ目の前にアイツの顔が!

「…泣き止んだか?」

「なぁっ!?」

この感触はもしかしなくてもっ!?

「きっキスしたのか?」

「ああ。驚くと、涙止まるって聞いたことがあるから」

「ショック療法かよっ!」

あっ…何か力が抜ける。

確かに涙は止まったけどよ。

「それじゃ、改めて…」

俺の肩を掴むと、再びキスしてきた。

「んっ…」

あたたかくて、そして口の中に甘さが広がる…。

キスはイヤじゃなかった。

イヤじゃないどころか…。

「…いきなりだな。5年間、手も出さなかったクセに」

「一度手を出せば、理性が利かなくなるのを分かっていたから、必死にガマンしてた」

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