《MUMEI》

数分後。葉子は目を覚ました。真っ暗闇の一本道の上で、頭から血をながしながら。傍にあった、のどに尖った木の枝が突き刺さって死んでいる双子の実妹の死体を見て葉子は吐いた。

生き残ってしまった。葉子は混乱と苛立ちとで大きな奇声を発した。どれだけ叫んでいたか。気が付くと葉子は数時間前まで自分が逃げようとしていた大きな村に入っていた。

朝の冷たい雨が葉子をいっそう美しくした。修羅に堕ち、鬼となって二十三人を殺した森代。なぜ森代はそんなことをしたのだろうか。葉子は雨に打たれながら、村をとぼとぼと歩きながら考えた。しかし理解できなかった。妹が殺人鬼となる動機が全く分からなかった。

「双子なのに。双子なのに分からない。やはり双子といえど他人は他人か。顔も仕草も声もそして生まれた時も同じなのにやはり他人なのか。いや違う。双子として生まれたのだ、家族として生まれたのだ。人殺しとなったことは理解できないが、森代は殺人鬼となった。それはまぎれもない事実。私は家族であり双子の妹である森代の罪を償わなければならぬ」

責任感と罪悪感、そして変えられぬ現実を胸に、葉子は村人に自身を捕らえさせた。己を大量殺人鬼である「南 森代」と偽って。

都会にある裁判所で葉子は判決を受けた。死刑。死刑方法はギロチンであった。

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