《MUMEI》

ギロチン台に森代になりすました葉子が準備された。

「最後に何か言い残すことはありますか」

男が優しく語りかけてきた。葉子は、

「鏡をくれ。死の直前まで私は自分の顔を見ていたい。私の顔が見える位置に鏡をくれ」

用意された鏡に葉子は、誰にも聞こえないほど小さな声で語りかけた。

「森代、あんただけを先に行かせてすまなかった。だが次こそこれで二人で行くことができる。共に堕ちましょう。共に滅びましょう。行く先はただひとつ。地獄」

重い刃がけたたましい音と共に葉子の首をはね飛ばした。はねられた首は鏡の前まで転がっていった。そこには共に命を絶つことができた美しい双子の姉妹の顔があった。

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