《MUMEI》

『わたし』の正体は、この病院で殺された者達。

この病院は、違法な臓器売買を行う、違法の闇病院だった。

山奥に建てられ、普通の人間には一切知らされず存在する。

この病院の客は、主に権力者や金持ちばかりだ。

臓器の病気にかかった時、彼等はここへ来て手術を受け、延命するのだ。

そしてその臓器提供者は…売られた者や連れ去られて来た者、どうしようもなくなって来てしまった者と、理由はさまざまだ。

だが一つ言えることは、ここへ来てしまった者は、もう二度とここから出られない。

生きたまま臓器を取られ、ギリギリの状態で生かされ続ける。

そして使える臓器を全て取られ、死んだ者はこの池に捨てられる。

この池は特殊な作られたもので、水はただの水じゃない。

この水に触れたものは、全て溶けて無くなってしまう。


本来なら有のものを無にするだけの池。

しかし彼が、『わたし』を作り出してしまった。

バラバラにして捨てられた部位を集め、『わたし』という人型の生き物を作り出したのだ。

だから記憶がなかった。

でもデジャブは感じられた。

例え脳が覚えていなくて、体で覚えていることはあったから…。

そして全ての水を吸収した後、わたしは穴から這い上がった。

「助かるよ。今のボクには肉体が必要でね」

「そう…」

「何か言いたいこととかある? 大サービスで聞いちゃうよ」

彼は本当に機嫌良さそうだった。

しかしわたしは首を横に振った。

恨みたい相手は、この身に吸収してしまった。

もう、何も思い残すことはない。

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