《MUMEI》
呪文
「ん、眩し・・・」

ふとカーテンの隙間から漏れてきた光に、今宵は目を細めた。

気だるげに目線だけを枕元のうさぎ時計にやると、針は5時半過ぎを指している。

いつの間にか朝を迎えていたようだ。

きつい朝日の光を避けるように、ごろりと背を向ける。

何だか夢見てた気がする、明るく輝いていたような・・・。

昨日は眠れずに過ごしていたと思っていたが、夢を見る時間程は寝ていたようだ。

自分の神経はそんなに柔では無いのか、鈍いのか・・・きっと両方であろうが。

衝撃が強すぎる話を聞いた夜に寝られてしまうことに、思わず小さく口元を緩めてしまう。

でも、その方がいいのかもしれない。

鈍いままでいられたら、狂ったように暴れることもなく、泣きわめくこともなく。

毎日をいつも通りに過ごせるのだから。

「着替えようかな」

ゆっくりと体を起こしてベッドの縁に腰かけると、壁に掛った制服に目をやった。

いつも通りの制服を着て、いつも通りに学校に行く。

それが今自分に出来る、一番のことだろうから。

お母さんは心配するだろうけど・・・。

母の心配そうな顔を浮かべて心が少し痛んだが、制服に手を伸ばして立ちあがった。

やっぱり歩雪くんや、秋葉、琴吹くんに会いたい。

会って、元気だよ、もういつも通りだよ、って伝えたい。

それぞれの顔を頭に浮かべながら、ゆっくりと着替え始めた。

【いつも通り】に。

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