《MUMEI》
小雨の中を
-









「………」



秀一はそのまま

雨を降らすのに飽き始めた空を見た



「雨…止んできたな」






俺は恥ずかしさと後味悪さを感じながら


秀一の手を放して俯いた



「佑二」

秀一が俺を呼んで

辺りを見回してから


「あっち、向いてみろ」



俺から見て


秀一がいる方と反対側を指した


俺がそっちに顔を向けると


「…体ごと向けよ」

と、秀一は笑った




俺が素直に秀一に背を向けると









左腕に触れないように













後ろから抱き締められた


「…!?」



「頑張れ」

「…!」



秀一は

「…俺を惚れさせろよ」

俺の右肩に顔を埋めて囁いた



「…そしたら、好きになってやれる。
好きになってやるからさ」









秀一はそれだけ言うと、俺から離れて







俺と同様下に置いてたカバンを引っ掴んで





小雨の中を走って行った

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