《MUMEI》
プレイルーム
美里が銃を構えている。
「動くな。動いたら迷わず撃つぞ」
瑠璃花とマスクマンは硬直した。
「彼女にバッグを返しなさい。ヘタな真似したら撃つわよ」
男は瑠璃花にバッグを放った。瑠璃花はゆっくりとバッグを掴む。
「あなたは行きなさい」
「はい」
瑠璃花はバッグで胸を隠すと、走って屋上から出た。
(先輩、あたしが囮になったと思ってるのかなあ?)
それなら助かる。
(バレてないよね?)
瑠璃花は急いで服を着た。
(応援を呼ばなきゃ)
屋上では、美里が銃を向けながらマスクマンを睨みつけていた。
「マスクを取りなさい」
男は両手でマスクを触った。
「マスクを投げたりしたら撃つからね。本気よ」
男はマスクを堂々と取って顔を見せた。
「…夜月」
「久しぶりだな、刑事さん。会いたかったよ」夜月実は笑顔で言った。
「神妙にしなさい。刃向かうなら撃つ」
夜月は、バスケットボールのパスのように、マスクを鋭く美里に投げた。
「貴様!」
夜月が逃げる。美里は慎重だ。どうせ回って来る。ヘタに追いかけず、逆から走って来るのを待ち構えた。
しかし、角から黒いシャツがバッと飛び出して来た。
「あっ…」
美里がバランスを崩した隙に、夜月は小部屋に飛び込み、ドアを閉める。
美里が銃を構えながら追う。ドアは開かない。鍵をかけたか。
「開けなさい!」
日本の警察は銃を撃たないと思っているのか?
美里は発砲して鍵を壊した。思いっきりドアにキック!
よほど古いのかドアはバタンと倒れた。美里は銃を前に向けながら部屋に突入。横からプシューとスプレーを噴射された。
「しまった!」
吸ってしまった。夜月は美里の顔面になおも噴射する。美里は床に倒れた。これ以上吸ったら危ない。転がって逃げようとしたが、さらにスプレーを顔にかけられた。片手で鼻と口を庇うが、意識が朦朧としてきた。
(まずい…)
気を失ったら何をされるかわからない。美里は歯を食いしばった。しかし強烈な眠気には勝てず、ガックリと気を失ってしまった。
夜月は銃を奪うと、ベッドのシートを取り、美里を抱きかかえてベッドに寝かせた。
仰向けで無防備な美里を眺める。よく見るといい体をしている。夜月はほくそ笑んだ。
「たっぷりかわいがってあげる」
夜月は棚にある箱から手ぬぐいを4本出した。ここは夜月の秘密のプレイルームだった。

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