《MUMEI》

…その数時間前…

白は夢視の部屋を後
にして、城へと向か
っていた。


『おいっ、花!』

突然、暗闇から声を
かけられ、白は心臓
が止まる程驚いた。


『うわっっ!?だ、
誰ですか?』


ガサリと音を立てて
暗がりから現れたの
は、レイノルド殿下
の側近の男。


『殿下の命令で、お
前を待っていた。俺
に着いてこい。』

憮然とした顔で、そ
う告げると、白の前
を歩き始めた。


『本当に来るとはな
…バカなヤツ。』

暫く無言で歩いてい
た男が、ボソリと呟
いた。


『行くに決まってる
だろ!主を守る為だ
!』


その言葉を聞いた男
の足がピタリと止ま
る。


『はん!主の為ね?
お前、これから自分
が何をされるのか、
判ってるのか?』


『うっ…それは…』

痛い処を突かれた。
実は、白は自分が何
をされるのか、良く
判っていなかったの
だ。

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