《MUMEI》
無謀な賭け
夜月は、美里の脚のほうに回った。両足を吊されて腰が浮いている。
ただでさえ屈辱的なポーズなのに、ドエスアクマンは心を攻める。
「美里。ダメだよ、女刑事が、犯人にお尻を晒しちゃ」
「やめろよ、そういうこと言うの!」美里は真っ赤な顔で怒鳴った。
「だってお尻丸見えだよ」
美里は震えた。
「貴様それでも人間かよ!」
「心配しなくても大丈夫だよ美里チャン。凄くきれいなお尻だから」
「死んでしまえド変態!」
「何だと?」
夜月はわざと怖い顔をして近づいていったが、美里が涙目なので笑みを浮かべた。
「あ、ちょっとからかい過ぎたかな?」夜月は美里のおなかに手を乗せる。「ゴメン。許して」
「…別に、いいけど」
夜月はさらに迫る。
「俺たち、距離が近くなったと思わないか?」
「え?」
「少しわかり合えたと思うんだけど」
(バカは死んでも治らない)
美里は心底呆れたが、話を合わせた。
「そうかしら?」
夜月は笑顔が消えない。
「美里。俺に攻められて陥落したら、俺のこと好きって認めると言ったよな?」
「言葉を変え過ぎよ」美里は睨んだ。「陥落なんて1000パーセントあり得ない」
「なら勝負しよう」
「勝負?」
「俺に落とされたら、抱かれるっていうのはどうだ?」
美里はさすがに緊張した。そんな賭けをしたら、死んでも負けられない。
「たじろいたか美里?」
「だれが」
「怖じ気づいたなら前言を撤回しな」
「だれも怖じ気づいてなんかいない」美里はむきになった。
「だって1000パーセント勝つ自信があるなら、何だって賭けられるだろ?」
(こいつ…)
美里は唇を噛む。
「体は賭けられないか。所詮は女の子だな」
「黙りなさい。あんたに何されたって平気よ。体。賭けてもいいよ」
夜月の目が光り輝いた。
「ほう。さすがは天使美里」
「その代わりあなたも何か賭けなさいよ。片方だけじゃフェアじゃないでしょ」
夜月はエキサイティングな展開に燃えた。
「なるほど。では何を賭けよう?」
「あたしは、いちばん大事なものを賭けるのよ。あなたもそれに見合った重いものを賭けなさいよ」
「例えば?」
美里は、毅然とした瞳で真っすぐに夜月を見た。
「もし、あたしを落とせなかったら、ほどきなさい」
夜月は感激の面持ちで美里を見つめた。
「ほどくということは、逮捕されるっていうことか?」
「あたしは体を賭けるのよ。それくらい賭けなさいよ」
夜月は胸の高鳴りを抑えきれない。
「こんなに興奮したプレイは初めてだ。美里に出会えた幸運を噛み締めるね」
夜月は愛しの美里に熱い眼差しを送る。
「しかもレイプじゃなく美里を抱けるとは」
「あたしは絶対屈服しない。あなたこそ、負けたらほどきなさいよ。負けたのに変なことするとか卑怯なことはなしよ」
「それは安心しろ美里。それやったら雑魚だろ」
夜月は、勝負前だから体に触るのは我慢し、美里に顔を近づけた。
「美里こそ、負けたら潔く身を任せろよ」
美里は緊張感に襲われた。無謀な賭けか。しかし賭けに勝てば逮捕できる。
「俺も命懸けだな。ほどいたらボコボコだろ?」
「そんなことしないよ」美里は甘い声で否定した。
勝ちを確信している夜月は、満面笑顔だ。美里は万が一のことを考えると、緊張して胸のドキドキが止まらない。

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