《MUMEI》
ケジメ
「おはよう・・・・・・」

「あ、あんた・・・・・・!!どこか具合悪いの!?」

今宵が制服を着て階段を下りてくると、加奈子が朝食の準備の手を止めて駆け寄ってくる。

「学校行くから下りてきたんだけど」

「あんたまだ6時半よ!?こんなに早く起こされないで起きてくるなんて!!」

「私だって1人で起きれるよ!!」

今宵は椅子に腰掛け、コップに牛乳を注いだ。

「はぁ〜。雨降らないといいけど」

まだ驚きを隠せない加奈子は、失礼なことを言って首を傾げながら台所へ戻った。

忙しそうにする加奈子の背中を見ると、今宵は下を向いて呟いた。

「早く行かないと、辛くなっちゃうから・・・・・・」

歩雪くんが来る前に家をでなくちゃ。

学校に行ったら何か言われると思うけど。

今宵は朝食を食べ終わると、時計に目を向けた。

「7時半になるなぁ」

時計の長針が5と6の間を指している。

「もう行こうかな」

「え?ふーくん来てくれるでしょ?」

加奈子は洗い物が終わったらしく、手をタオルで拭いている。

「うん。でも今日はちょっとやることがあるから!!」

こんなの嘘。

それでも私は早く行かないといけない。

「そうなの?じゃあふーくんに言っとくわね」

「うん。お願いね」

今宵は仏壇に向かい、手を合わせた。

今日も守ってね、お父さん、朔夜お姉ちゃん。

「じゃあ行ってきます!!」

「行ってらっしゃい!!」

今宵は鞄を持って玄関から飛び出したが、無意識に足が止まった。

そこは歩雪の家だった。

「決心したはいいけど。なんか言われたらうまく答える自信ないなぁ・・・・・・」

歩雪の部屋を見上げながらポツリと呟いた。

呟いた言葉と共に、心に何かがのったようにズシッと重くなった。

が、今宵はふと我に返ると、首を勢いよく横に振った。

いけない、いけない。

もう決めたんだから。

ケジメなんだから。

今宵は何度も同じことを心の中で唱えると、学校へと足を向けた。

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