《MUMEI》

生物と定義されるモノには全て"魔力"が宿る。火、氷、水、雷、風、土と六種類あり、一つ一つの個体によってそれは異なる。その種類での区別を属性と呼ぶ。

これは人族にのみ確認される特徴だが、属性によって体毛と瞳の色が変化する。火ならば赤、氷ならば紫、水ならば青、雷ならば黄、風ならば緑、土ならば茶。濃さや明るさの違いはあるものの、これ以外の色は有り得ない。

……筈だった。

現在から16年前にそれは生まれた。赤でも紫でも青でも黄でも緑でも茶でもない、白。真っ白なイレギュラー。

新属性などであったなら、虐げられることはなかったのかもしれない。あるいは崇められたかもしれない。だが、実際はそうではなかった。

魔力無し。

魔力無しであるが故の属性無し。属性無しであるが故の白《無色》。

魔力を持たない彼は、落ちこぼれの烙印を押され、蔑まれて生きてきた。

誰もが彼を落ちこぼれと呼ぶ。例外は居ない。

だが少女は己を心の内で詰った。皆が落ちこぼれと呼ぶから、自分が彼を落ちこぼれと呼ぶ理由などその程度でしかない。そんな軽い理由でしかなかった。

でも彼にとってはとても重かったのだ。重くて重くて、潰れて死んでしまいそうなくらい。

少女は彼の叫びにそれを感じた。同時に自分の行いを恥じた。そして誓う。

彼の心を癒やそう、癒やしてみせよう。理由は罪悪感でも同情でもない。全く無いと言えば嘘になるが。しかし一番の理由は別だ。

……では何かと問われても、自分でもよく分かっていないというのが答えなのだけど。

まあでもそれもこれも全部後。まずは謝らなくては。

少女は晴れ渡る空のような青色の髪を揺らしながら、入学式が行われる大講堂へと歩いて行った。

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