《MUMEI》

訓練所はとても広い。その為幾つかの区画に分けられている。

まず、魔法の訓練をするための第一区画。回帰魔法という半永久魔法がかかっており、いくら壊れようがすぐに元の状態に戻る。

次に、模擬戦などに使われる第二区画。回帰結界という回帰魔法の応用のような魔法がかかっており、結界内部のモノはいくら傷付こうがすぐに戻る。但し痛みは残る。

そして、サバイバルのような実戦訓練に使われる第三区画。森林地帯になっていて、しかも独自の生態系が形成されている。自然の森林と何ら変わりない。実戦らしさを出す為に回帰魔法はかかっていない。

今回使うのは第二区画。AからTまでの20クラスが同時に使うのだが、模擬戦用の闘技室が沢山ある為問題無い。

バーグ率いるB組は第二闘技室に入った。中央に舞台がある。それもかなりの大きさなので、魔法戦闘をする上での不便は無さそうだ。

「並びとかはどうでもいいから集まれー」

舞台に上がる階段の手前でバーグが叫んだ。色々と闘技室内を見ていた生徒たちが集まってくる。皆仲の良い者たちで固まるが、当然ラスは一人だった。

一人の筈だった。

ラスが少し離れた所に立っていると、青髪の少女が近付いてきた。ラスは不審に思うも取り敢えず無視をする。

「この模擬戦の意義を説明しようか。実はな、一週間後にクラス対抗戦があるんだ」

ざわつく生徒たち。入学式の一週間後にそんなものがあると言われれば当然だろう。しかしバーグは特に気にせず話を続けた。

「結果は成績に関係無いから安心しろ。ただ入学直後にどれだけやれるか確認するだけだ。つっても、組んで戦う以上仲間の実力が分かんないのは不安だろうから、ってことでの模擬戦だ。分かったか」

説明を終えても生徒たちは不安そうだ。当然青髪の少女――アテナも。動じていないのはラスだけ。寧ろつまらなそうだ。それに気付いたアテナは、思わず訊いてしまった。「不安は無いのか」と。

「んなモンあるワケねぇ」

話し掛けられたことに若干たじろぎながらも、ラスは即答する。

アテナは気付いた。彼は自信が有るのだと。

彼は努力した。努力して努力して得た己の実力に、揺るぎない自信が有るのだ。

「逆に何でそんな不安がるのか訊きてぇよ」

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