《MUMEI》

「アテナは良かったぞ。沢山の水柱で道を制限することでアインのスピードを殺す。そして水柱を破壊させてその水を利用することで、本来完成まで時間のかかる水陣を素早く作り上げた」

アテナは誉められて嬉しそうだ。しかし対照的に、アインの顔はどんよりと暗い。

「アイン、お前は相手を素早く倒すことに拘り過ぎだ。あの水柱の中は言ってしまえばアテナの領域。そんな所で下手な事をするからあっさりやられるんだよ。一旦引いて様子見ってことも覚えろ」

はい、と弱々しく返事をして舞台を降りる。アテナも、ちょっぴり良心の呵責を感じながら続いて降りていった。

その後も出席番号順に戦い、終了後にバーグの評価を受ける。というふうに進んでいった。

その途中。アテナは困っていた。

ラスに謝ろうと思っているのだが、何やら不機嫌そうで、怖くて話し掛けられないのだ。でも謝らないと何も進まない、そう自分を叱咤するのだが、結局チラチラ様子を窺うだけに止まっている。

その行動がラスを不機嫌にしているとは彼女は気付いていない。

「……おい、何なんだてめぇはさっきから」

「ひゃっ!?」

もう限界になったのか、ラスからアテナに話し掛けた。ラスに話し掛けられるとは思っていなかったアテナは、驚いて変な声を上げてしまう。慌てふためく彼女に対して溜め息を吐いた。

「だから、さっきから何なんだって訊いてんだ。言いたい事があんならはっきり言いやがれ」

まだ落ち着いていなかったが、少し考えれば分かる。これはチャンスだ。本当なら自分からちゃんと言うべきだったのだが、今は自分の情けなさなど考えないことにする。

「ごめんなさいっ!」

勢い良く下げられたら頭に、ラスは困惑した。

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