《MUMEI》 「それは何に対する謝罪だよ」 「落ちこぼれなどと言って貴方を軽々しく馬鹿にしたことです」 てきとうにあしらおうと思った。だが、やめた。この少女の目は本気だ。なら、 俺も本気で相手をしよう。 「それは罪悪感か? それとも同情か? だったら要らん。そんなもんクソ食らえだ」 「全く違うと言ったら嘘になります。でも違います」 「じゃあ何だ」 「分かりません」 「……何?」 露骨に顔をしかめるラス。ふざけているのか、本気に見えたのは気のせいなのか、そんな思いが感じられる。 だがその眼差しに揺らぎはない。アテナはあくまでも本気だった。 「何が私にこう思わせているのかは分かりません。でも本気です。本気で貴方を支えてあげたいと、癒やしてあげたいと思っています」 かつてこんな言葉をかけてくれた者がいただろうか。人を想った言葉というもののなんと甘美なことか。 「信じられるか、そんな言葉!」 信じたい。この荒んだ心を、癒せるならば癒やして欲しい。もう、苦しいのは嫌だ。 「信じてくれなくても構いません。私は絶対成し遂げます」 ああ、畜生。 「何と言われようと、私は貴方の側にいます。そう決めました」 信じる信じないはもう関係無いんだ。 だって俺は、その言葉だけで、とっくに癒されている。 「……なら、そうしてみろ。この荒んだ心を、この汚れた体を、救ってくれ」 「はい!!」 抱負を語るだけで、こんなに癒された。ただ想ってもらうだけで、こんなに救われた。 別に信じていないのに。上辺だけだと思っているのに。それでもこんなに甘美に響く。 ならいつか、この少女のことを心の底から信じることが出来たなら、 きっと、真の意味で救われるのだろう。 前へ |次へ |
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