《MUMEI》

14組目の試合が終わった。次が最後の試合。いよいよ彼の出番だ。

「ラストだ! ヤノス・カーバ対……ラス・エグネヴァ!!」

無言で立ち上がるラス。と、アテナは今更ながらに気付いた。ラスは武器を持っていない。

「武器は? 無いなら向こうに置いてあるよ」

「要らねぇ」

振り向くことなくぶっきらぼうに言い放つ。アテナは、拳闘士なのかな、などと考えていたが、ラスに話し掛けられて思考を中断した。

「よく見ておけよ」

アテナがどういうことなのか考えている間に、ラスはさっさと舞台に上がってしまった。慌てて視線を向けると、バーグがアテナと同じことを言っていたが、ラスは答えない。代わりに、

「ヴィシアーダ」

と呟いた。するとラスの右手に、真っ白な鞘に納まった真っ白な剣が現れた。更に腰には真っ白な剣帯が。それを見た誰もが、己の目を疑った。

「お、おいおいマジかよ……何で学生が魔武器なんて持ってやがる?」

「絶対有り得ない訳でもねぇだろが。いいからさっさと始めやがれ」

バーグの疑問を切って捨てると、ラスは早くも構えをとった。鞘から抜き放たれた剣はやはり純白。しかし美しいとは思えない。寧ろ禍々しい。純白の闇、というものがあるなら、それを具現化するとこうなるのだろうと思わせられる。

相手のヤノスは、構えたラスに合わせるように慌てて戦斧を構えた。

バーグは呆けていたが、ラスに睨まれ慌てて合図をする。

「は、始めっ!」

ヤノスが突撃する。しかしラスは動かない。ヤノスはそれを、ラスが怖じ気づいて動けないのだと勘違いしてしまった。

そして魔武器の所持者がどういう存在なのかすら忘れて、てきとうに突っ込んでしまう。

「おらぁぁぁあああっ!!」

力任せの雑な一撃。ラスはつまらなさそうに鼻を鳴らすと、一歩踏み込んだ。

「え?」

ヤノスの視界からラスが突然消え去った。

ヤノスは、訳の分からないうちに激痛によって気を失うことになる。

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