《MUMEI》
眠りのキス
「ふわぁ〜あ」

「おっきな欠伸だな」

「だって寝みーもん」

大きな欠伸をして、オレはアイツに寄り掛かった。

アイツの部屋で、二人でテレビゲームをしていたところだった。

「眠いなら、ベッドで寝ろ」

「ん〜…」

頷くも、オレはそのまままぶたを閉じる。

「…オイ」

アイツの低い声が、心地良い。

外は寒く、部屋の中があったかいっていうのも、眠気の原因だ。

それに…アイツの部屋で、アイツの隣にいること。

それがとっても安心する。

アイツに寄り掛かり、寝息をたてる。

「…ったく。しょうがないな」

オレより体格の良い幼馴染の男は、オレを抱き上げ、ベッドに下ろす。

毛布をかけてくれて、頭や頬を撫でる。

そして―唇にキスをする。

もう一度頬を撫でて、アイツはオレに背を向ける。

…全部気配で分かっていた。

隣の家に住んでいるコイツとは、もう十八年もの付き合いだ。

保育園から高校まで、ずっと一緒。

一緒にいることが、空気のように当たり前に思っていた。

それがいつの頃か…変化が起きた。

気付いたのは一年前の夏だった。

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