《MUMEI》

いつものようにコイツの部屋に遊びに来たオレは、部活帰りで疲れていた。

だから冷房の効いたこの部屋に来た途端、気が抜けて、ベッドに倒れて寝てしまった。

その間、アイツは飲み物を取りに行ってて、戻って来た時にはオレはベッドで眠っていた。

でも…本当は寝ていたのは一時だけで、アイツが戻って来た時には意識があった。

けれどふざけて眠ったフリをしていた。

近付いてきたらいきなり起き出して、驚かせてやろうと思っていた。

なのに…気配に気付いて目を開けた途端、アイツの顔が間近にあって…キス、された。

突然のことで、オレは抵抗できなかった。

そのまま寝たフリをし続けるしかなかった。

そしてその後も…オレが眠ると、アイツは必ずキスをしてきた。

オレはキスされることを分かっていて、あえて寝たフリをしている。

もしかしたら…バレているのかもしれない。

でも、起きてキスのことをオレが言い出したら、今の関係は…絶対に崩れる。

良い方向に? …それとも、最悪な方に?

分からないから、知らないフリを続ける。

こんなこと、いつまでも続けちゃいけないと思うのに、もう一年以上続けてしまっている。

ふと眼を開けると、アイツは黙ってオレに背を向け、座っていた。

何考えてるんだろう?

こんなに近くにいるのに、全然気持ちは伝わってこない。

…ずっとこのままだったら、どうする?

自然と終わるのか?

終わらせられるのか?

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